省エネのカギ、モータ用インバータを特許情報から見る

最終更新: 2020年9月26日



二酸化炭素抑制等の環境問題により内燃機関(ガソリン・ディーゼルエンジン)からモータ・電池へのパワートレイン変化がおきています。これは既存の産業構造を根底から覆す可能性があります。そのモータを駆動するためにはインバータが必要となり、インバータがモータの性能を左右する存在であるためです。

特に自動車産業においては、内燃機関とモータが共存するハイブリッド車が普及していますが、電気自動車や燃料電池車への移行も始まっています。米カリフォルニア州ではZEV (ゼロエミッションビークル:電気自動車と燃料電池車)規制が始まっており、州内の車販売には一定割合でZEVを含まないと税金を課すものです(トランプ大統領は厳しすぎるとして規制の無効を唱えておりカリフォルニア州と訴訟中です。世界の車メーカを巻き込んで注目される動きとなっています。結果はどうあれ、環境問題を考えた場合に大きな流れとして電動化への移行は避けられないと考えます)。したがって、モータを駆動するためのインバータは、今後、ますます重要になっていくと思われます。

モータを駆動する場合、インバータはモータ回転速度によりエネルギー消費量を調整できるため、インバータがない場合と比較して省エネルギー効果が期待できます。省エネ効果が期待できるということは、損失が低減されて小型化、低コスト化も期待できます。

このような省エネのカギを握る、モータ用インバータの重要な観点を最近の特許情報から見てみましょう。



モータ用インバータのスイッチング損失低減


インバータの効率改善がモータ装置全体の効率改善につながります。特にインバータのパワー回路部は、半導体スイッチで構成されています。よって各半導体スイッチのスイッチング損失低減がインバータの効率改善や小型化につながるテーマです。スイッチング損失を低減する方法は、共振回路を構成してゼロ電流スイッチングをさせる方法(WO2019-167244)や負荷条件によって回路構成を変化させてスイッチング損失を低減させる方法(特許-6733418、特開2020-124018)などがあります。



モータ用インバータのSiC、GaN回路


インバータのパワー回路部は、半導体スイッチで構成されていますが、従来スイッチ素子としてシリコンのトランジスタやIGBTが採用されていました。ところが近年、半導体技術の進歩によってSiC(シリコンカーバイト)やGaN(ガリウムナイトライド)という新たな素子が開発されており、その素子に着目したテーマです。特許-6727320、特許-6744935においてはインバータを構成する半導体スイッチはすでにSiCやGaNを前提とした記載となっています。





モータ用インバータのデッドタイム制御


インバータ制御は上下アームのスイッチが同時にオンすると貫通電流が流れて破損するという課題があります。そのために上下アームをスイッチングする際にはデッドタイムを設けて同時ONを防止する方法がとられています。一方、デットタイムを設けるとデットタイム期間は、制駆動電力が伝送できないために制御性が低下するなどの弊害があります。デットタイム制御を実施して弊害を解決するテーマです。特開2020-092559、特開2020-102922、特開2020-115719は、いずれもデットタイムを設けた弊害を解決するための制御方法です。




モータ用インバータの一体化


インバータを小型化しモータと統合するモータとインバータの一体化競争が進んでいます。これは車輪にモータとインバータが実装できるようになりインホイールモータが実現できます。自由度の高い走行ができるようになります。ただし、小型化し車輪に搭載するには課題も多く、熱処理方法やノイズや振動対策は必須と考えます。このテーマはそうした課題解決をテーマとしています。特許-6717904は、放熱構造の一例です。



このように、特許情報はモータ用インバータの最前線を把握することができる、技術と特許の羅針盤です。ネオテクノロジーでは、電源技術の専門家が最近の特許情報から実際の設計開発に役立つ発明だけを厳選してお届けするコンパスシリーズをシリーズ発刊しています。ご関心のあるお客様は、ぜひこちらをご覧ください。


※ネオテクノロジーはモータ用インバータの特許情報を継続ウォッチングしています。

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《ネオテクノロジーの電源専門技術スタッフYNプロフィール》

パワーエレクトロニクスを担当。電源機器メーカ開発部長、イギリス研究所駐在、JEITA電源委員などの経験を活かし電源特許情報定期監視、技術監修として活躍。