SDGsを軸とした新サービスの発想を促進する、ワークショップ支援システム

最終更新: 6月28日



新型コロナウイルスの感染拡大から約一年が経ちました。この一年間で、経済格差や働き方、教育環境、福祉や医療限界など、これまでほとんど議論されていなかった多くの「社会課題」が顕在化し、SDGsやサステナビリティへの関心が高まっています。しかし、考え方を変えれば、「課題」があるからこそ、それを解決するための工夫が生まれます。ビジネスの世界においては、社会的課題を自社の強みで解決することで、企業の持続的成長につなげよう、このような意識に基づく、様々な取り組みが始まっています。とはいっても、どのようにして、私たちは社会課題を解決するアイディアやビジネスを生み出せるのでしょうか?今回は、社会課題を軸とした新サービス創出のための発想を促進する、ワークショップ支援システムの発明です(WO2021/085085、日立製作所)。


SDGsはビジネスになるのか


近年、世の中の価値観の変化、従来型の大量生産モデルの限界、地球環境の破壊などから、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への関心が高まっています。社会課題解決型のビジネスを行っていなければ、投資対象や取引相手、協創パートナー、優秀な人材の就職先として選ばれない時代が来ています。多くの企業は、SDGsをビジネスチャンスと考え、新ビジネス創出に取り組み始めています。


しかし、SDGのメッセージは明確で分かりやすいのですが、実際のビジネスにおいては、SDGsの概念が抽象的でビジネス分野としては広すぎ、何から手を付けたらいいのか分かりにくいところがあります。また、仮に社会課題を解決するために新事業を創出できたとしても、継続的な事業にならずに終わってしまうことが多い。これは既存事業やコア技術などの強みを活用したビジネスを構想ができていないためだと考えられます。既存事業やコア技術などの強みは、技術やフットプリント、所持しているデータなど様々な観点があり、複数の側面から検討することが重要になってきます。このように、社会課題解決の観点、企業の事業観点など、様々な観点から、新事業を創出するための支援システムが求められています。


アイディア創出のためのワークショップ


デザイン思考やUX(顧客体験)デザインが注目を集めたこともあり、アイディア創出のためのワークショップは様々なシーンで実施されるようになってきました。ワークショップでは、事前に目的とゴールを明確にし、準備を十分行うことによって、質の高いアイディアを生み出す可能性が高まります。しかし、ワークショップさえすればよいという考えや、準備が不十分だと、質の高いアイディアは生まれにくく、効果を実感できずに一過性で終わってしまいます。


この発明は、既存事業や事業アイディア、コア技術などを発想の起点として、その強みを複数の観点で議論を行い、強みに関連する社会の課題事例を参考にすることで、社会の課題を軸とした新サービスの発想を行うワークショップを支援するシステムの発明です(WO2021/085085、日立製作所)。


図1はワークショップ支援システムの全体構成を示します。


この支援システムでは、3つの項目(社会課題分類、社会課題の事例、既存事業やコア技術などの検索観点)に分けているところがポイントです。


参加者は、支援システムが算出した観点の重要度を考慮し、社会課題の事例などを参照しながら、議論を行うことができます。







社会課題分類データ

社会課題分類データ(図3)は、社会課題を大分類と中分類に分類したデータです。大分類は、食料、医療など比較的大きな括りでまとめた分野に関する分類で、中分類は大分類での課題となっている、具体的な社会課題のキーワードになっています。図4は、中分類詳細データの構成の一例です。中分類詳細データは、中分類に紐づけられた大分類、タイトル、社会課題が発生している背景、社会全体で発生している経済損失、地域、解決の方向性からなります。


社会課題事例データ


社会課題などの予め設定されたキーワードが含まれているWEBページをクローリングして、情報取得可能な場合に、WEBページのURL、タイトル、文章情報を取得し、社会課題事例データを蓄積します(図5)。その後、Doc2Vecなどの自然言語処理を用いて、社会課題事例に含まれる文章をベクトル化します。さらに、教師データを用いて、大分類、中分類、具体事例/解決事例を分類する機械学習モデルを生成し、収集した社会課題事例を分類します。


検索観点データ


検索観点データ(図6)は、ワークショップの参加者が、1つのテーマ(発想の起点となる既存事業や事業アイディア、コア技術などの内容)に対し複数回行う議論の観点の情報のことです。ここでは、「解決している課題」や「対象(顧客)」、「コア技術」を議論の観点とします。例えば、「解決している課題」観点では、事業や技術で過去に解決している課題について議論を行います。また、「対象(顧客)」観点では、社会課題の対象となっているサービスや顧客について議論を行います。「コア技術」観点では、社会課題に対してコア技術の使い方や機能や効果について議論を行います。このワークショップでは、観点毎に区切って議論を行います。1つのテーマについて複数の観点があれば、その観点毎に議論が繰り返されます。



ワークショップの流れ


図2Bはワークショップの流れを示します。

  • ファシリテータ(102)によりワークショップのテーマの分類に応じた発想の起点を選択します。選択する発想の起点は、検索観点データに予め設定された起点から取得します。

  • ファシリテータと参加者(103)は、検索観点データにあらかじめ設定された検討(検索)観点毎に議論を行います。ワークショップ支援シス