ネオテクノロジーは、2014年1月にパテントガイドブック「高齢者の見守り技術」を発刊しました。高齢者が安心して暮らせる社会を実現するために、急速に進む高齢化に対応して見守りの新しい仕組みやアイデアを、特許情報から探りました。
このたび、最新アップデート版としてダイナミックマップ「高齢者の見守り技術」を発刊しました。世界の長寿フロントランナーである日本は、超高齢社会とどのように向き合っていくのでしょうか。最新国内特許情報から、高齢者の見守り技術の全体像を俯瞰しました。
今回のブログでは、高齢者の見守り技術から、注目発明をご紹介します。
日課動作の見守りから、振り込め詐欺などを防ぐ
人は年を取ると共に徐々に心身の機能が低下し、日常生活の動作や自立度の低下を経て、要介護の状態に陥っていきます。要介護状態に至る前の状態として、日本老年医学会によって提唱された新概念「フレイル」は、人々の予防意識の向上につながることが望まれています。フレイルをいかに未然に防ぐか、あるいはフレイル高齢者をいかに早期段階で発見することができるか、ということも、見守り技術の重要な要素になっています。
フレイルは身体の虚弱だけでなく、認知判断の虚弱、社会性の虚弱も含まれます。この発明は、ユーザの日課動作を蓄積することで、ユーザ本人の生活リズムを効率的に見守るとともに、ユーザにおける的確な取引を支援する発明です（特開2021-002265、みずほ銀行）。ここでは「的確な取引」について明記されていませんが、出願人が銀行であることから、金融取引などを含むと想定されます。高齢者をターゲットとした振り込め詐欺や、不当な通信販売等、高齢者の正常な認知判断が欠如し、トラブルに巻き込まれるのを防ぐことを想定していると思われます。
《特開2021-002265、みずほ銀行》
介護する人を支援する
人間は機械ではありませんので、単に機械的にセンシングするだけでは意味がありません。人と人のコミュニケーションをベースにした見守りも重要な要素です。そのために、高齢者の家族によるケア、介護施設における介護スタッフによるケアが必要になります。しかし、ケアする人の負担が増加するという別の課題も生じています。介護者の負担を軽減するなど、高齢者をケアする人材へのサポートも重要な要素になっています。
この発明は、ケアスタッフが操作を行うことなく、ケアスタッフが介護対象者の居所に所在しているか否かを精度よく把握するための見守りシステムです（特開2021-009549、コニカミノルタ）。ここでは、空気振動を介した通信によって識別情報を用いて、スタッフが居所に所在しているか否かを判断します。空気振動は、介護対象者の居所の所定位置に設けられた端末部からの空気振動、または、ケアスタッフが携帯するスタッフ端末からの空気振動を用います。
ビーコンのような電波を利用した位置確認技術では、居室に設置されたビーコンから出力される電波が居室の外まで容易に到達するため、ビーコンから送信される位置情報を居室の外でも受信してしまい、位置や所在が誤って認識されるという問題が発生してしまいます。この発明では、空気振動である音波を用います。空気を介して音波が伝わるため、電波に比べて遠達性も低く、また居室の壁やカーテン等の遮蔽物によって伝達が遮蔽されやすくなります。したがって、介護対象者の居所の端末部またはスタッフ端末は、端末部が設けられる位置またはスタッフ端末が所在する位置に対応する範囲に限定して識別情報を発信することができます。これにより、ケアスタッフが操作を行うことなく、ケアスタッフが見守り対象者の居所に所在しているか否かを精度よく把握することができます。
《特開2021-009549、コニカミノルタ》
ダイナミックマップ「高齢者の見守り技術」
最新国内特許情報から、高齢者の見守り技術の全体像を俯瞰しました。
ダイナミックマップはWEB版の特許技術動向レポートです。ノイズの無い特許情報を、技術分類から、出願人から、豊富な特許マップと併せて閲覧できます。WEB版なので、同じ社内の人であれば、いつでも、どこでも、誰でも、アクセスが可能です。
《技術分類》 《上位出願人》
・在宅高齢者の行動の見守り ・コニカミノルタ
・施設内の高齢者の行動見守り ・パナソニック
・高齢者の社会活動の見守り ・オムロン
・高齢者の身体状況の見守り ・シャープ
・見守り機器 ・京セラ
・介護者の支援 ・日立製作所
・その他の見守り技術 ・ＬＩＸＩＬ
・参考情報 ・アイホン
・ソニー
・セコム など